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オーフス条約を日本で実現するNGOネットワーク

活動トピックACTION

種の保存法あり方検討会に対して意見書を提出しました。


 環境省は、2014年6月に施行された「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」(種の保存法)のあり方を検討するため、2016年に種の保存法あり方に関する検討会を立ち上げ、検討を進めています。オーフスネットは、その検討会に対し、以下の意見書を2016年9月13日に提出しました。

意見書


絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律あり方検討会
座長 石井 実 様

                     オーフス条約を日本で実現する NGO ネットワーク(オーフス・ネット)
                             〒136-0071 東京都江東区亀戸 7-10-1 Z ビル 4 階
                                            事務局長 中下 裕子

2016年9月13日

 オーフス条約を日本で実現する NGO ネットワーク(以下「オーフス・ネット」といいます)は、日本においても、オーフス条約が保障する3つの権利(情報アクセス・市民参画・司法アクセス)を実現することを目指して、2003年10月に設立された市民団体です。
 絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法(以下「種の保存法」)が定める取組の手続過程において、情報アクセス・市民参画が確保されることは、種の保存法の目的である「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存を図ることにより、生物の多様性を確保する」上で必要不可欠だと考えます。オーフス・ネットは、今回の法改正の検討に当たり、以下のとおり、意見を述べます。

第1 常設の科学委員会の法定化

1 意見の趣旨

 希少野生動植物種および生息地等保護区の指定、評価を行う常設の科学委員会を設置し、その組織構成および意思決定の手続についても法定することにより、意思決定過程の民主性および透明性を確保すべきです。

2 意見の理由

 平成25年改正時の付帯決議では、「種指定の優先度と個体数回復などの目標、必要な保護管理計画などを勧告する、専門家による常設の科学委員会の法定を検討すること。」 とされました。
 現行法の下でも、種の指定および保護増殖事業計画の策定にあたっては、中央環境審議会の意見を聴かなければならないとされています(法4条6項および法45条1項)。しかし、中央環境審議会における審議内容は公開が原則であるのに対し、現状では、種の指定や保護増殖事業計画の策定に当たり、どのような検討がなされたのか、その意思決定過程について国民に公開されていないのみならず、審議に参加した専門家の氏名すら明らかにされていないため、審議内容の妥当性を科学的に検証することができません。
 また、種の指定の優先度や個体数の回復など事業に関する決定だけではなく、これらの評価も科学的に行われなければ、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存の効果があるのかどうかがわかりません。ところが現在は、種の指定および保護増殖事業計画の結果については、評価が行われていません。
 そのため、付帯決議にあるような専門家による常設の科学委員会を設置し、同委員会の意思決定が民主的かつ透明性を持つように、その組織構成および意思決定の手続についても法定することが必要です。そして、希少野生動植物種および生息地等保護区の指定、保護増殖事業計画の策定のみならず、その成果の評価についても同科学委員会が行うことで、より効果的に絶滅のおそれのある野生動植物の種を保存することができるようになると考えます。

第2 国民による指定提案制度の法定化

1 意見の趣旨

 希少野生動植物種および生息地等保護区の指定について、国民による指定提案制度を法定化すべきです。

2 意見の理由

 希少野生動植物の種の指定については、平成32年までに新たに300種を「国内希少野生動植物種」に追加指定することを目指す中、平成26年度よりウエブサイトを活用し、指定に関する提案の募集がされています。平成27年度には、この制度に基づく提案のうち12種が指定されており、国民が意思決定に参画をする機会となっています。また、京都府、奈良県等、いくつかの自治体ではすでに提案制度が条例化され、実務上、希少野生動植物の保護の推進に重要な役割を果たしています。
 絶滅のおそれのある種の保存を迅速に行うためには、当該種が生息する地域の自然をよく知る者から、生息地保護区の指定に関する提案を受けることが有用です。現在の提案制度の対象は、希少野生動植物の種の指定に関するものだけですが、これに限らず、生息地等保護区の指定にも拡大することが必要です。
 現在の提案制度においても、種の指定の提案について、採否の結果が通知されています。しかし、検討の結果、採用しないという結論に至った場合には、採否の結果のみならず、そのような判断に至った理由を回答するとともに、種の保存に支障(違法採取等)を生じないような方式でその内容を公表することを義務付けるべきです。また、指定の可否を科学的に判断するにあたって考慮すべき事項を法令上明確化しておくべきです。多様な種が対象であるため、共通で客観的な基準の設定は困難としても、少なくとも指定に当たり科学的に考慮すべき観点は明確化できるはずです。そうでなければ、提案者には、指定がなされなかった理由が正当なものかどうかを判断することができません。
 また、現在の提案制度では、提案が到着してから1か月以内に、環境省にて書類の不備の有無等を確認し、提案者に受理または書類の不備について連絡をすることになっています。また、現在の掲載されているホームページには「平成27年11月30日(月)までに環境省に到着した提案については、原則として平成28年度中に指定の適否を検討します。それ以降に受け付けた提案については、平成29年度以降の検討となります。」と掲載されています。たとえば今日、平成28年9月13日に提出した提案については、「平成29年度以降」に検討されるということまではわかりますが、現状のままでは平成29年度中に検討されるのか、あるいはその数年後の平成33年に検討されるのかわかりません。提案が長期間にわたり放置されるようなことを防ぐために、標準処理期間の定めも必要です。
 提案制度については、すでに20以上の法律で、法定化されています(グリーン アクセス プロジェクトの調査結果に基づく)。例えば、地域における多様な主体の連携による生物の多様性の保全のための活動の促進等に関する法律4条4項では、「地域連携保全活動を行おうとする特定非営利活動法人等は、当該地域連携保全活動を行おうとする地域をその区域に含む市町村に対し、当該地域連携保全活動に係る事項をその内容に含む地域連携保全活動計画の案の作成についての提案をすることができる。」と規定し、地域連携保全活動計画にかかるNPO法人の提案権を法定しています。また、エコツーリズム推進法5条6項でも、特定事業者等は、市町村に対し、協議会を組織することを提案することができる。この場合においては、基本方針に即して、当該提案に係る協議会が作成すべき全体構想の素案を作成して、これを提示しなければならない。」として、事業者が協議会の設置を提案できることとしています。
 希少野生動植物の種の指定については、すでに実務上、提案制度が運用され、一定の効果を上げていることから、法定化により、制度の継続性を確保し、透明性の向上を図り、その対象を種の指定だけではなく、生息地等保護区に拡大することで、提案制度をより拡充・強化すべきです。

※グリーン アクセス プロジェクトのホームページに掲載。

第3 保護増殖事業に関する協議会の設置

1 意見の趣旨

 保護増殖事業計画の決定および実施にあたり国民をはじめとする多様なステークホルダーの参加の機会を確保するために、保護増殖事業計画に関する協議会を設置できるように法定化すべきです。

2 意見の理由

 現在は、環境大臣等が、「保護増殖事業の適正かつ効果的な実施に資するため、中央環境審議会の意見を聴いて保護増殖事業計画を定めるものとする。」とされていますが、国民の意見を聴いたり、ともに実施することは定められていません(法45条)。また、個別の保護増殖事業については、国の実施、地方公共団体の実施する事業の確認、国や地方公共団体以外の者が実施する事業の認定が規定されていますが(法 46 条)、国、地方公共団体、民間団体の間の協力や協働については何ら規定がありません。保護増殖事業を適正かつ効果的に実施するためには、中央環境審議会での審議だけではなく、広く国民の意見を聴き、実施においても国民が協力することが必要です。
 少なくとも、現在では70近くの法律において、協議会等、国や地方自治体が国民と協働し、事業を実施する仕組みが盛り込まれています(グリーン アクセス プロジェクトの調査結果に基づく)。たとえば、地球温暖化対策の推進に関する法律では、「地方公共団体、都道府県センター、地球温暖化防止活動推進員、事業者、住民その他の地球温暖化対策の推進を図るための活動を行う者は、日常生活に関する温室効果ガスの排出の抑制等に関し必要となるべき措置について協議するため、地球温暖化対策地域協議会(以下「地域協議会」という。)を組織することができる。」として地域協議会の設置が法定化されています。
 また、地方自治体でも、種の保存に関し、協働事業の実施を定めている条例が複数あります。たとえば、京都府では、「京都府絶滅のおそれのある野生生物の保全に関する条例」に基づき、府民協働による保全回復事業(生息地等協働保全制度)を設けています。具体的には、地域住民等と協働して保全回復事業を行おうとする保全団体を登録し、登録団体は、より効果的に保全回復事業を実施するため、地域住民等との協働に関する協定を締結し、知事の認定を受けることができます。そして京都府は、登録団体が認定を受けた協定に係る事業の実施する場合、必要な支援を講じるものとされ、実際にも府の技術的・財政的支援のもと、地域のNPOのイニシアティブによる保全回復事業が行われ、当該地域の種の保存に貢献しています。
 さらに、種の保存法に基づく保護増殖事業についても、民間団体の保護増殖計画の認定に留まるのではなく、国民や自然保護団体が国や地方公共団体とともに事業に適切に参画できる仕組みを設けるべきです。

第4 罰則、措置命令の強化

1 意見の趣旨

 譲渡規制違反時の罰則を強化し、没収を可能とするべきです。また、違法取引等に対する措置命令を強化すべきです。

2 意見の理由

 種の保存法に違反する不正取引の多くには業者が関与し、生きた固体に関する違反については、単価が高い爬虫鋼が多く、再犯事件も多いということから、罰則を強化することが、違法取引の抑制につながると思われます(「希少野生生物の国内流通管理に関する点検とりまとめ報告書」参照。)。
 不正取引は、財産上の不正な利益を得る目的で行われるものであり、反社会的勢力の収入源となっていることも少なくないとみられることから、不正取引から利益を得ることを防ぐため、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の対象とし、犯罪収益等も没収することも検討されるべきです。
 とりわけ、現行法のままでは、違反取引を摘発したとしても、取引の対象となった個体や器官を没収する規定や個体の保全のための措置命令を発する規定がありません。鳥獣保護法では、「犯罪行為の用に供した物及びその犯罪行為によって捕獲した鳥獣又は採取した鳥類の卵であって、犯人の所有に係る物は、没収する。」と没収の規定を定めています(同法83条3項)。また同法は、許可を受けないで鳥獣等の捕獲等をした者、登録を受けないで鳥獣の飼養をした者に対し、当該違反にかかる鳥獣を解放することその他の必要な措置を講ずることを命じることができる旨定めています(同法第 10条、第22 条)。
 しかし、現行種の保存法では、捕獲等や譲渡し等については、没収規定や、許可を得ず捕獲等や譲渡がされた場合の措置命令規定がありません。そのため、規制対象の希少野生動植物種の個体について、その保全のための措置を何も講じることができずに、死んでしまうこともあり得ます。希少野生動植物種を守るためには、不正取引の対象となった個体も適切に保護し、種の保存に役立てるべきです(当然のことながら鳥獣保護法とは異なり、解放だけではなく適切な措置が必要です)。生きた個体を没収するときには、没収を保全するために、裁判が確定するまでの間、当該個体の適切な飼養を確保するため、措置命令などの法制度や、飼育するための体制を整備しておくことが必要です。そのような制度が実効性のあるものとなるように、動物園等の善意に頼るのではなく、没収前後の飼養に関する費用負担も明確化し、没収およびその関連制度を整備することが必要です。

第5 本検討会の進め方

1 意見の趣旨

 本検討会傍聴者の発言の機会を設けるべきです。

2 意見の理由

 本検討会には、毎回、多くの傍聴者が参加しています。第1回目には、傍聴者からの発言の時間が設けられたことは評価できますが、第2回目および第3回目については、そのような時間はありませんでした。絶滅のおそれのある種を保存していくためには、国民の理解と協力が不可欠であり、傍聴者の中には市民団体として積極的に種の保存のための活動を行っているものが少なくありません。現場で取り組む幅広い市民団体等の意見をぜひ聞いていただきたいと思います。

                                                  以上

■本件に関するお問い合わせ先
オーフス・ネット 担当者名:粟谷 しのぶ(あわや しのぶ)
Email:jimukyoku@aarhusjapan.org

■意見書(PDF)はこちらからダウンロードできます。

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